歴代高柳賞-歴代高柳研究奨励賞

H27年度(2015)高柳研究奨励賞受賞

光野 徹也(こうの てつや)

【 静岡大学学術院工学領域助教 】

極微光バイオセンサアレイによる細胞間通信分子の
高分解能空間イメージングヘの挑戦

【従来の研究成果の概要及び今後の研究計画】

申請者は、厚さ200nm、直径600nm~3μm程度の六角形状GaNナノ/マイクロディスク結晶にウィスパリングギャラリーモード微小光共振機構(WGM)によって光を留めることにより、この微小構造がレーザ発振することを実証してきた。また、このWGMには、ナノ/マイクロディスク周囲の屈折率に応じてレーザ発振波長が変化する特徴があることも明らかにし、ナノ/マイクロディスクを用いた光スイッチング素子や周囲の分子などを分析できる超微小センシング実現への可能性を実証した。

これまでの結果は、染色や酵素等による化学反応を経る必要がなく極微小領域(ナノ/マイクロ領域)の分子などの存在を局所センシングできることを示しており、構造がシンプルなため高密度集積-アレイ化によって局所情報を走査収集して統合により分子の空間イメージをリアルタイムに出力できる可能性がある。これにより高分解能でこれまで可視化できなかった分子の分布状態の時間・空間イメージを得ることができるバイオセンサシステムを実現できる。本研究では、この特性により細胞から周囲へと放たれる分子の分布状態を細胞の位置情報とともに空間イメージ像を得ることができる。

「細胞間通信伝達分子のリアルタイムイメージングシステム」を狙う(図1イメージ)。

これまでのバイオサイエンスに対する光科学のアプローチは、蛍光する分子を吸着させるなどの手法などによって見えるようにして視よう(評価しよう)という分析手法をベースにしてきた。従って、カメラで感知できないものにはアプローチすることが困難であった。本研究では、光が本質的に感じ、物質固有の物理量である誘電率(屈折率)の変化を可視化するアプローチである。これは、見えないものを可視化するアプローチである。

図1.細胞間通信伝達分子のリアルタイムイメージングシステムの概要図

図1.細胞間通信伝達分子のリアルタイムイメージングシステムの概要図

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