歴代高柳賞-歴代高柳研究奨励賞

H26年度(2014)高柳研究奨励賞受賞

居波 渉(いなみ わたる)

【 静岡大学大学院工学研究科准教授 】

電子線励起アシスト光学顕微鏡の開発

【従来の研究成果の概要】

新しい原理に基づく顕微鏡、電子線励起アシスト光学顕微鏡を開発した。蛍光薄膜に数ナノメートルに収束した電子線を照射し、微小な光源を生成する。この微小な光源によって試料を観察する。その結果、本顕微鏡の空間分解能は、50nmに到達した。従来の光学顕微鏡の空間分解能は、光の波の性質によって、200nm程度に制限されている。さらに、開発した顕微鏡を細胞観察に応用し、高い空間分解能でその動態を観察できることを示した。生物や材料の反応状態を高い空間分解能で、かつその動態を観察できる本顕微鏡法は、科学技術・学術の発展に必要不可欠である。

本研究は、Nature Nanotechnology のレビュー記事、SPIEのホームページ及び新聞で取り上げられた。 Optics Express 誌に投稿した論文はエディターによって選ぱれ、Virtual Journal for Biomedical Optics に発表された。さらに、応用物理学会、バイオイメージング学会、日本分光学会、5th International Conference on Photonics などの学会発表で賞を頂いた。また、国内外の数々の学会において、招待講演を行った。

【今後の研究計画】

本顕微鏡による細胞観察では、細胞が透明であるため、シグナルが弱く、高い信号雑音比で信号を得ることができない。そこで、光源の高輝度化、高い信号雑音比での信号取得法の開発が必要になる。また、電子線による試料の損傷を減らす。光源の高輝度化には、蛍光体の成膜、アニール条件の最適化を行う。高い信号雑音比での信号の取得には分割検出器を用いて、それらの信号の差分を取り、微小な変化を増幅し検出する。透過電子線による試料損傷の低減には、試料を載せる蛍光体薄膜を被覆する。すでに、数値計算により、金で蛍光薄膜を被覆すると試料損傷を効果的に抑制できることが分かっている。

『歴代高柳研究奨励賞』贈呈一覧はこちら